『鍔屋』という銘

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つば屋の庖丁をお買い上げいただくとわかるのですが保証書もなければ店舗情報がどこにも記載されていません。

『つば屋で購入した庖丁』

それを証明するのは、庖丁に刻印または印字されている「銘」のみとなります。
つまり「銘」とはその庖丁の保証書のようなものなのです。

庖丁はきちんと手入れをすれば 短くても家庭用で10年はご使用いただけます。
それだけの長い期間、紙の保証書を維持するのはなかなか難しいですが
庖丁に刻まれた銘ならば 庖丁が存在する限り共に残すことができます。

例えば、庖丁が誰かに贈られたり後にまた別の誰かに譲渡されたとしても、店名(銘)を入れることによって
新たに所有した方は当店に辿り着くことができ、我々もしっかりとその後のお世話をさせていただくことができます。
何年たっても責任をもって庖丁のお世話をする、『鍔屋』の銘切にはそういった覚悟があります。
当店で取り扱う庖丁は、そのほとんどが手造りです。
人の手で作っている以上、完全に不良品をゼロにするのは難しくどんなに職人の腕が卓越していても
焼きがうまく入らなかったり金属にごみが入り込んで商品にならないものが稀ですが出てきます。

無論そういった不良品は販売前に取り除かれますが、庖丁(金属)の内側に問題が潜んでいる場合はすぐには分かりません。
その場合、その庖丁を実際に何年も使い研いでいった結果、初めてその問題が切れ味に現れることが可能性としてあり得ます。

このように、購入後10年など長い期間が経過してから「なんだか最近よく切れない」
ということがあった場合にも、しっかりとお世話をさせていただくための銘なのです。

engraving
これは当店の庖丁の例ですが、和庖丁には裏側にも刻印が入っていることがあります。
見ていただくと柔らかい軟鉄(峰側)と、普通は硬くて刻印が不可能な鋼(刃側)にまたがって焼印が入っていることがわかります。

これは、鍛冶屋さんが鉄に焼き入れを行う前、つまり鉄が鋼の硬さを持つ前に刻印を打ったということを示しています。
すなわちお店と鍛冶屋さんの深いつながりの証であり、庖丁がお店のために責任をもって作られた証でもあるのです。
そして、裏の刻印を入れることで、つば屋と鍛冶屋さんが共に責任を背負う覚悟をも示しています。

つば屋は、当店の銘が入った庖丁を、何年経とうとも責任をもってお世話させていただきます。
見た目や値段だけでなく『未来』のことも含め、当店の庖丁のことを見ていただけると幸いです。